どの国の伝承にも、嘘をつくと鼻が伸びるといった話が一つはある。
もしすべての人間がそんな風だったら、きっと整形外科が儲かることだろう、と少年は思った。
しかし往々にして嘘というのは優しいものでもある。嘘のうち四割が耳に優しく、六割は聞くに堪えない、といったところだろうか。それに対して真実なんて、せいぜい一割が耳に優しい程度で、あとの九割なんて大概の人間にとってみれば聞くに堪えないものである。
なんと。少年は思った。
「なんと」少年は呟いた。
しかし少年に反応するのは強く吹き付ける風くらいのものだ。
崩れ去った建築物に、だだっ広いのは瓦礫の原。
酷く澄んだ蒼穹に、ぼんやり浮かぶのは純な雲。
遥か広がる残骸に、淡く伸びるのは野草の芽。
依然風吹く惑星に、虚しく佇むのは生き残り。
少年は曖昧模糊としていて意味のない、有耶無耶とした際限の無い、そんなことをゆらりゆらりと考える。
どの国の伝承にも、嘘をつくと鼻が伸びるといった話が一つはある。
もしすべての人間がそんな風だったら、きっと人は世の真実に絶滅するだろう、と少年は思った。