男達は、絶望した。
絶望して、神に縋った。
神に縋って、願いの成就を祈った。
なんにせよ、彼らが死ぬのは時間の問題である。
三人の男が、太平洋に浮かぶ無人島に漂流した。男達は船に積んであったわずかばかりの食料で、一週間助けを待った。そして今、明日にも餓死しようとしている。
その日の晩、彼らは夢に神を見た。
神は言う。
「ああ、お前達の祈りは届いていたぞ。しかしながら、お前達は棺に入らざるをえんだろう。」
「そ、そんな……」
「それは致し方ないことだ。諦めろ。時に、お前達は棺に入って、家族と会ったときに、家族に言ってほしい言葉はあるかね?」
唐突な神の発言に、男達は狼狽を隠せなかった。
やがて、一人目の男が言う。
「私は……妻に『あなたはいい弁護士だっただけでなく、いい父親でもあったわ。安らかな休息を』と言って貰いたい」
神が答える。
「そうか、よしわかった。私の力で、お前の妻にそう言わせよう。そして、その言葉だけはお前が聞けるようにしてやろう」
二人目の男が言う。
「俺は駈け落ちして連絡が取れない娘に『ついに何も言わずに終わっちゃってごめんなさいパパ。そして、ありがとう』といって欲しい」
神がわかったといわんばかりに頷く。そして三人目の男の方を向いた。
三人目の男が言う。
「私は、子供達に『ねえ見てママ。パパが今動いたよ。わあ、パパが生き返った!』と言って欲しいな」
男が言い終わるか言い終わらないかのうちに、神は頷いて、夢は終わった。
それから二日後、無人島で倒れているところを見つかった三人の男の棺が、葬式場へ運ばれた。
一人は火葬され、一人は土葬され、そしてもう一人は生き返ったことは、いうまでもないだろう。
男達は、絶望した。
絶望して、神に縋った。
神に縋って、それぞれの願いを成就させた。
<了>